演目紹介

白鳥の湖

白鳥(とその他の鳥たち)の魔法の国で繰り広げられる、この哀愁漂う幻想の世界は、トロカデロの代表的作品といえる。
悪魔によって白鳥に姿を変えられた美しい王女オデット、そして王子ジークフリードが、愛によってオデットをもうちょっとで救えそうになるというこの作品のストーリーは、チャイコフスキーが1877年に作曲を仕上げたときは、ごくありふれたテーマであり、人間が鳥になったり、反対に鳥が人間になったりというのは、ロシアの民話ではよくあることだった。
そして、モスクワのボリショイ劇場での初演時には、不成功に終わっている。
今日我々が知っている「白鳥の湖」は1893年のチャイコフスキーの死の1年後、サンクト・ペテルブルグ・マリンスキーバレエ団(旧キーロフバレエ団)によって、改訂されたものである。今日この作品が世界で最も良く知られたバレエとして存在するのは、作品の映し出す、神秘的なヒロインの悲哀が、古き良き19世紀のロシア・バレエ団の栄華とあいまって、人々の心を強くひきつけたからであろう。

パキータ

パキータは、19世紀後期にロシア、サンクト・ペテルブルグで紹介された当時から、フランス様式バレエの代表作品とされてきた。
1846年にパリ・オペラ座で初演され、その1年後のロシアでは、プティパの振り付けが上演された。
原作はドルデヴェツの曲にマジリエが振り付けをした2幕のパントマイム・バレエ。物語は、スペインを舞台にして、ジプシーにさらわれたカルロッタ・グリジ(「ジゼル」のモデルともなったバレリーナ)扮する若い娘が、若くてハンサムな士官を死の床から救うといったものだった。
バレエ・マスターに就任したばかりのプティパは、当時の彼の成功作品2作(ドン・キホーテ、ラ・バヤデール)の作曲を手がけていたミンクスに曲を依頼して、素晴らしい小曲を付け加えた。これにともなって、プティパ・スタイルのパ・ド・トロワとグラン・パ・ド・ドゥが振付けられ、これらはすぐに公演の目玉となり、今日これらのみが、パキータの一部として残っているといえる。趣向を凝らした振り付けで、古典舞踊の壮大な可能性をアピールし、そこに驚くようなステップの組み合わせが加わり、作品をより豪華なものにしている。

ライモンダ

Photo credit: Zoran Jelenic

3幕15場のパシコーワの台本に基づいたこの作品は、1898年のマリンスキー劇場(後にキーロフ劇場となり、今はまたマリンスキー劇場)での初演の時から、観客を困惑させるものだった。その少々理解に苦しむ筋書きとは以下の通りである。 ライモンダ(ハンガリー貴族の娘)と婚約したジャン・ド・ブリエン伯爵(騎士)はライモンダを残し、サラセンとの戦に出てしまう。ブリエンの留守中に、アブダラーマン(サラセンの首領)がライモンダに言い寄る。ライモンダが拒むとアブダラーマンは彼女をさらおうとするが、そこへライモンダの守護神ホワイト・レディが現れて、アブダラーマンを殺しライモンダとブリエンを結婚させる。トロカデロはこれら全ての複雑な筋書を無視し、ハッピー・エンディングの物語を見せてくれる。第1場は花嫁登場から結婚式へ向かうまで、第2場は結婚披露宴となっている。

瀕死の白鳥

1905年にアンナ・パブロワのために振り付けられた作品。のちに彼女の代表作となる。
トロカデロはこの末期を迎えた鳥の姿を、独特の解釈で表現している。

公演ではこの他に小作品を予定しています。
小作品についての詳細は、会場で販売予定の「公演パンフレット」をご参照ください。